Olivia Forever
オリビアと聞くと、最近はオリビア・ロドリゴを思い浮かべる人が多いかもしれないが、
やはりオリビアと言えば、オリビア・ニュートンージョンだろう。
デビュー初期のオリビアは、カントリーやフォークのシンガーソングライター
(ボブ・ディラン、ジョン・デンバー、ジョージ・ハリスン、ブレッド、S&G他)
の曲をカバーしていることが多く、
英国生まれ
(母方の祖父はノーベル物理学賞のマックス・ボルン)、
オーストラリア育ち
(オーストラリア出身の有名な歌手ではヘレン・レディ、カイリー・ミノーグ、サラ・オレインなどがいるが)
の彼女はカテゴリー的にはカントリー歌手に位置付けられていた。
日本で大いにヒットした「ジョリーン」もカントリーの大御所ドリー・パートンの曲だ。
当初アイドル歌手的な存在だったオリビアだが、
1974年「Let me be there」
(この曲はエルビス・プレスリーが晩年コンサートでよく歌っていたらしい)
でグラミー賞最優秀女性カントリーボーカルパフォーマンス賞を、
カントリーの大物タミー・ワイネット
(レイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、キャリー・フィッシャー(スター・ウォーズ)他出演のスラップスティックアクションミュージカルコメディ映画「ブルース・ブラザース」の中で、
ブルース・ブラザースの二人、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが1980年当時既にカントリーのスタンダードナンバー化していたタミーの1970年グラミー賞曲「Stand by your man」をパロディ的に歌っている)
などを抑えて受賞した。
(当時、ラジオから流れてくる洋楽の歌詞をよく書き留めていたものだが、「Let me be there」も深夜放送で聴いた記憶がある)
更に翌1975年「I honestly love you」
で最優秀女性ポップボーカルパフォーマンス賞と最優秀レコード賞のダブル受賞を
キャロル・キングやロバータ・フラックなどがノミネートされる中達成した。
1976年はジャニス・イアンの「At Seventeen」に及ばず「Have You Never Been Mellow」で2年連続受賞はならなかったものの、
以後、70年代半ば~80年代にかけて綺羅星の如く輝く人気実力一流ボーカリスト達が鎬を削るアメリカショービジネスの世界で、
1976、79、81~83年の5回に渡って、グラミー賞最優秀女性ポップボーカルパフォーマンス賞にノミネートされている。
オリビアがイギリスの国民的歌手クリフ・リチャードのバックコーラスなどの下積みから世界的スーパースターに駆け上がったのは、
同じオーストラリア出身の音楽プロデューサー、アレンジャーであり作曲家のジョン・ファーラーの存在が大きい。
オリビアのビッグヒットの殆んどが彼のプロデュースやアレンジ、作曲によるものだ。
音楽プロデューサーと言えば、
世界のスーパースターなどミュージシャン100人以上のプロデュースやアレンジ等に関わったデヴィッド・フォスターの1986年のアルバムに、
オリビアと彼のデュエット曲「Best of me」が収録されている。
サイエンスライターの竹内薫氏は、オリビアの訃報に触れ竹内氏にとって思い出深いこの曲を懐かしみ、突然の別れを惜しんだ。
2009~2015年のミュージカルコメディドラマ「グリー」でリバイバルヒットしたジャーニーの1981年の曲「Don't stop believing」だが、
これに先駆けること5年、全く同じ題名の曲が
1976年ジョン・ファーラーによってオリビアのために作詞作曲され、同名のアルバムに収められシングルカットもされている。
大ヒットしたのはジャーニーの曲の方だが、馴染み深いのはオリビアの曲の方だ。
因みにグリースならぬ「グリー」にオリビアは2010年、「Physical」(1983年グラミー賞年間ビデオ賞)のPV再録という設定でドラマ出演している。
「Physical」はティナ・ターナーを想定して作られたが余りにセクシー過ぎる内容だと断わられた曲で、それをオリビアが当時ブームになり始めていたエアロビクスをテーマにしたことで
ビルボード10週連続1位になるまでにブレイクしたとのこと。(湯川れい子氏)
ジョン・トラボルタと共演した「グリース」、ジーン・ケリーと共演しELOサウンドも話題になった「ザナドゥ」など映画出演でも一世を風靡したオリビア、
1980年代にヒットしたオーストラリアのコメディ映画ポール・ホーガン主演「クロコダイルダンディー」シリーズの自虐的続編(?)、
2020年公開「The Very Excellent Mr. Dundee」がオリビア最後の映画出演となった。
2000年シドニーオリンピック開会式でJohn Farnhamと一緒に、集まったオリンピック選手達の間を縫ってテーマ曲「Dare to dream」を歌い歩いていた溌剌としたオリビアの姿が鮮やかに目に浮かぶ。